「ロカビリー調のギターフレーズとブルージーなボーカルが…」
「70年代Jポップのメロディラインを意識しながら、現代のオルタナティブロックの系譜に位置する…」
こんな言葉がさらりと出てくるようになればもう少し格好いい文章が書けるようになるのに、といつも悔しい思いをしている。しかし、残念ながら今の僕はこんな言葉を使って文章を書く度胸が無い。
僕は恥ずかしながら、〈ロカビリー〉はもちろん、〈ブルージー〉、〈オルタナティブ〉、〈70年代Jポップ〉も、わかりやすくスラスラ説明することができない。正直、〈ロカビリー〉なのか〈ロビカリー〉なのかも怪しい。下手すれば、〈Jポップ〉すら説明できない。日本のポピュラーミュージック、と言ってしまえばいいのだろうか。でもポピュラーかそうでないかなんてその人の線引きによっていくらでも変化するじゃん? やっぱりMステ? テレビに出ればJポップなの?
考えてみれば、簡単に使ってしまう〈エモい〉という言葉だって上手に説明できないし、どこからどこまでが〈パンクロック〉なのかもよくわからない。そういえば確か、一時期〈青春パンク〉なんて言葉もあったかもしれない。それはそうと〈ギターロック〉だって、ロックバンドなんて基本的にはギター中心じゃん。〈ミクスチャーロック〉? え、ラップが入ればミクスチャーになるんじゃないの? そもそも、〈ロック〉って何? わかりやすく説明してよ。ねえねえ。
音楽に関する文章は、こんな、わかったような気がする言葉ばっかりだ。それを書いている人はきちんと理解したうえで使っていても、読んでいる僕らは、ああ、あんな感じね、とわかっているような気になって、さらっと読み飛ばす。そして、いざ自分で文章を書くときに同じ言葉を使おうとすると間違った使い方をしているんじゃないかと不安になって、こっそりGoogle先生に相談してみたりする。
理解していない言葉を使うのは、とてつもなく怖い。よそから借りてきた言葉をむりやりねじ込んだみたいに、その言葉だけが文章の中で浮いている。お高いスーツでビシッとキメているのに髪は近所のおっちゃんがやっている床屋の1000円カットで済ませています、みたいな、無理をして急ごしらえの格好を付けようとしている臭いがプンプンする。そんな必死さがバレるのが怖くて、身の丈に合っている言葉しか文章で使うことができない。
僕は教養が少ない。悲しいくらいに、教養が少ない。