退屈で贅沢な一曲
「テレフォン・ラブ」 / 曽我部恵一
疲れた身体で帰宅。風呂上がりに一息ついて、寝る前に録画していたあまちゃんを一話分だけ、なんて思っていたはずなのに、気が付いたら時計は3時を回っている。出たぞ! 夜の時間泥棒が出たぞ!
夜は時間の流れが目に見えない、停滞した空間だ。昼の忙しい世界から夜に逃げ込めば、退屈なことや、何もしないことをようやく許してもらえるようになる。ああ、怠惰な自分を咎めることのない夜の時間が永遠に続けばいいのに。僕はこの無益な時間をずっと過ごしていたいだけなのに。
曽我部恵一「テレフォン・ラブ」は、退屈さが心地よい、夜の時間のような曲だ。派手さも、目立った展開も無いのに気が付いたら5分半も経っている。誰にもバレないようにこっそりと深まっていく夜の時間を、低いトーンのエイトビートとともに沈んでいく。そんな退屈さを許してくれる曲が、夜と一緒にひとりの部屋を満たしていく。
そして今日も、時間がどんどん夜に呑まれていく。
Text by Shun Ito
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