ストレイテナーの新しいミニアルバム「Resplendent」がリリースされた。ストレイテナーは過去にもいくつかのミニアルバムを出しているが、いずれも個性の強い、その時々のストレイテナーを切り取った作品であった。
だが、今回はうって変わって、収録されている5曲はそれぞれ違った個性を放っている。それこそ彼らのうちにある七色の魅力がそれぞれの曲の形として発現しているのだ。
タイトルの「Resplendent」という言葉は【輝き】という意味を持つのだが、なぜここであえてこの言葉を使ったのか。
今年デビュー10周年を迎えた彼らはなぜこのタイミングでこの作品を生み出したのだろうか。作品を聞くことにより読み解いていこうと思う。
今回のリード曲である「シンデレラソング」によってアルバムは始まる。ストレイテナーらしい、アッパーで爽快感溢れる曲である。夏のフェスなどでも披露されたこの曲は、サビでのシンガロング必至のライブにおけるキラーチューンになること間違いなしの名曲である。
この曲は初期を彷彿させるような、荒削りで、前だけを向いて、もがくように、ただまっすぐに突き進んでいたかつてのストレイテナーの良い意味での青さがあると感じた。
鬼人のごとく荒々しくドラムを叩くドラムのナカヤマシンペイ、体中まで響く爆弾のような存在感を出しているベースの日向秀和、冷静さと熱さを一曲の中で確信犯的に繰り広げるギターの大山純、そして今も昔もバンドの中核を担う美しいメロディを歌うボーカルのホリエアツシ。
この曲は、今の彼らが、かつての剥き出しのままのストレイテナーの延長線上にいることを明確に指し示している。若き頃にバンドで成功を夢見ていた、今の彼らが歌う「シンデレラソング」なのだ
さて、二曲目はうって変わってミドルチューンの「BRILLIANT DREAMER」である。前の曲とは違い、一呼吸おいて、落ち着いて聞くタイプの曲である。美しいコーラスワークとキラキラと輝く星のようなギターのサウンドがとても心地よい。彼らの武器の一つにコーラスの美しさが数えられるが、ギターのOJが加入してからその良さがさらに増した。
こういったオトナな雰囲気の曲をできるようになったのも彼らの10年間の成長の証であろう。昼下がりのまどろむような陽ざしの中で聞くのにはぴったりの一曲である。
今回のアルバムの中ではアクの強い次の曲のためのブレイクタイムのような配置となっているが、ライブで聞くとどうなるのかが楽しみな一曲である。
三曲目は、ファンキーなベースが特徴の「BLACK DYED」である。さっきまで美メロを繰り広げていた彼らからは想像できないようなラップ調の曲であり、これは近年、彼らの持ち味の一つとなった「DONKY BOOGIE DODO」の系統の曲であると思われる。
近年、歌詞のあちこちに動物がでてくるのはホリエ氏の遊び心なのか、趣味なのだろうか。彼の詞の世界はどこか寓話のようで、私たちの生きている世界とは別の世界を想起させる。羊やペンギンや犬などの実際にいる生き物を扱ったり、ドードー鳥やガーゴイルなどのこの世にはいない生き物を扱ったりと、現実と空想が入り混じっていく。楽曲の雰囲気と相まって我々をストレイテナーの世界へと、じわじわと取り込んでいくのである。
プレイ面で言うと、間奏のベースソロはシンプルながらもリスナーのツボを掴むようなもとなっており、ベースの日向氏も気に入っているという。
この曲を聞いて思ったのは、彼らの魅力の一つは楽曲のバラエティの広さにあるということである。同じバンドがやっているとは思えないような種類の曲を生み出し、どのようなジャンルの曲でもストレイテナー色にできるのはやはり素晴らしいアレンジ力のなせる技であろう。
四曲目は「SCARLET STARLET」。個人的にはこの曲がアルバムの中では一番気に入っている。サビで叫ばれる曲名は何を意味するのか。「SCARLET」は【緋色】という意味があり、罪の象徴でもあり、高貴であるという意味も内包している。「STARLET」は【小さな星】という意味があり、転じて、成功を約束された若手女優という意味もある。
私はそこから、周りの大人の引いたレールに乗せられてしまった、哀れな女性の姿を想像した。乗せられたレールから降りるわけにもいかず、まわりからも蔑まれ、疎まれてしまいどうしようもなくなってしまった女性が、「信じる信じないはどうでもいい 叫べ 怒れ 深紅に染めた旗を掲げ」とサビで憤り、感情を爆発させているように感じた。
曲の内容と相まって、私には、この曲のギターソロがこのアルバムの中で一番感情的に弾かれていると感じた。とても緊張感があり、ライブで聞いたら鳥肌必至の名ソロである。
そして最後を飾るのは今回唯一のスローナンバーである「WISH I COULD FORGET」。アコースティックツアーを乗り越えて彼らが磨きあげてきたのは、名曲「シンクロ」のような、じっくり聞かせるようなタイプの曲である。
まるで、炎の揺らめく暖炉と温かい食事が待っている木造の家のような優しさと、明け方の別れの切なさを合わせ持ったこの曲は、冬に良く合うと思った。もう少し寒くなり、息が白くなる頃にライブで聞くこの曲は更に輝きを増している事であろう。
今回ストレイテナーが私たちに提示した、様々な輝きは、この先彼らが進んでいく道の多岐さを象徴しており、これからもバラエティに富んだ曲を次々と生み出し、私たちを楽しませてくれることであろう。
音楽に対してひたむきに、まっすぐに進んできた彼らが見せる輝きが、楽曲を聞く私たちの道をまっすぐに照らしてくれるのである。どの道に進もうが、それのどれもがストレイテナーであることは、これからも発表されていくであろう楽曲たちを聞けば、はっきりとわかるだろうと私は確信している。
10周年という節目に発表されたこの作品が、彼らの決意表明であり、我々が彼らを追いかける際の眩いまでの道標となるのだ。
【シンデレラソング】
【BLACK DYED】
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